複合機のレーザー方式とインクジェット方式の違いは何?オフィスではどっちがおすすめ?
複合機やプリンターを職場に導入する場合、レーザー方式とインクジェット方式ではそれぞれに特徴があります。
どんな印刷が多いのか、印刷量によって向き不向きがあり、その職場に合った方式のものを選ぶことで仕事の効率やコスト削減にもつながります。
そこで今回は、それぞれの特徴や向いている職場などについて詳しく解説していきます。
導入を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
複合機のレーザー方式とインクジェット方式の違い【比較まとめ】
複合機にはレーザー方式とインクジェット方式の2種類があり、それぞれ印刷の仕組みや特徴に大きな違いがあります。
レーザー方式はドラムユニットを帯電させ、そこにレーザー光を照射して静電気の変化を利用し、トナーというプラスチック粒子をドラムに付着させてから用紙に転写。最終的に熱と圧力で紙に定着させる仕組みです。
一方で、インクジェット方式はインクを微細な粒(約1ピコリットル)にしてノズルから直接紙に噴射するというシンプルな構造を持ち、物理的な接触が少ない印刷方法です。
レーザー方式の複合機は水に強く、滲みにくいため印刷物の耐久性が高く、印刷ブレが少ない点でも評価されています。
また、1ページごとに印刷する仕組みにより印刷速度が非常に速く大量印刷に向いています。
トナーは高価に見えますが、印刷可能枚数が多く1枚あたりのコストは安く抑えられ業務用であればモノクロ1枚あたり2~3円、カラーでも15~25円程度が一般的。これらの理由から、企業ではプレゼン資料や会議資料などを大量かつ安定して印刷するためにレーザー方式が多く選ばれています。
一方で、レーザー方式は内部構造が複雑で印刷の仕組みに必要な工程が多く、ドラムや定着器など多くの部品が含まれるため、本体価格はインクジェットの約3倍と高額になりがちです。
インクジェット方式は構造がシンプルで本体価格が安く、家庭用であれば1万円程度から導入可能。その仕組みから、写真やパンフレットなど色の表現が重要な印刷に強く、条件が揃えば写真並みの高品質な印刷も可能です。
6色や8色のインクを使うモデルでは、色の階調や鮮やかさがより豊かになり、デザイン関係の職場におすすめです。
消費電力も少なく、最大でも80〜100W程度と省エネ性に優れているのも特徴的。ただし、水性インクを使うため、湿気や水滴に弱く滲みやすい点には注意しなければなりません。
また、1枚あたりの印刷コストが高くなる傾向もあり、インク代で利益を得るというビジネスモデルのためインクの交換頻度が多いとランニングコストが高くなる場合があります。
印刷の仕組みが複雑でも耐久性・スピード・コストに優れるレーザー方式は、印刷量が多く、文字や表中心の業務が多いオフィス向きです。
一方で、導入コストを抑えたい場合や、写真やカラー印刷の美しさを重視する用途ではインクジェット方式がおすすめ。それぞれの仕組みや特徴を理解したうえで、職場の印刷ニーズに合った方式を選ぶことが大切です。
複合機のレーザー方式とインクジェット方式の違いについて、さらに深堀りしながら詳しく後述していきます。
複合機のレーザー方式における印刷方法とは?
レーザー方式の複合機印刷は、下記の手順を経て行われ、全体としてはトナー(プラスチック粒子)を静電気と熱の力を活用して用紙に定着させる仕組みです。
- 帯電
- 露光
- 現像
- 転写
- 定着
レーザー方式の場合、ドラムユニットを帯電させて、光線をドラムに照射することでドラム上にグラフや文字などの像が作られます。
ドラムが帯びている静電気を利用してトナーをドラムに付着させて、それを紙に移していきます。
次に、ドラムの表面にレーザー光を照射する露光工程に進みます。
このレーザーは印刷データを元に、文字やグラフなどの必要な部分にのみ当てられます。
レーザーが当たった部分は電荷が弱まり、そこに画像の“設計図”のような像が形成されます。
そのあとに行われるのが現像。トナーと呼ばれる微細なプラスチック粒子はあらかじめマイナスに帯電させられており、ドラム表面の電荷が弱まった部分(像が描かれた部分)にだけ吸着します。
こうして、トナーが画像としてドラム上に現れます。
続いて転写の工程に入り、ドラム上のトナー像を用紙に移します。
用紙の裏側からプラスの電荷を加えることで、マイナスに帯電したトナーが用紙に引き寄せられるという仕組みで行われます。
ここで初めて、用紙に印刷物が写し取られるわけです。
最後に定着と呼ばれる工程があり、定着ユニットが熱と圧力を加えることで、用紙上のトナーをしっかりと溶かして定着させます。
この工程によって、印刷物が手でこすっても落ちない状態になります。
紙に写ったトナーを熱などにより定着させて印刷。簡単に言えばトナー(プラスチック粒子)を使用した印刷方法になります。
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複合機のインクジェット方式における印刷方法とは?
インクジェット方式の複合機の場合、転送されたデータを元にインクをノズルから噴射して印刷していきます。
下記の流れで印刷が行われ、物理的な接触をほとんど伴わないため、写真やイラストなどの高精細な印刷におすすめです。
- データ処理
- ノズルの噴射制御
- インク粒の噴射
- 紙への着弾
簡単に言えばインクを使用した印刷方法になります。
非常に微細なインク粒をノズルから紙に向けて噴射することで文字や画像を描く仕組み。まず、パソコンやスマートフォンなどから送られてきた印刷データを、複合機が内部で画像処理します。
この処理によって、どの位置にどの色のインクをどれだけ噴射するかといった指示が決定されます。
次に、インクジェットヘッドと呼ばれるパーツのノズルから、極めて細かなインク粒が噴射されます。
インクの粒はわずか1ピコリットル(1兆分の1リットル)という非常に小さな単位であり、1秒間に何万粒ものインクが紙の上に飛ばされます。これによって、繊細な濃淡や色のグラデーションまで再現できるのが特徴です。
インクの噴射方法には、主に2種類の技術があります。
ひとつはサーマル式と呼ばれる方式でインクに熱を加えて気泡を発生させ、その圧力でインクを押し出す仕組みです。
もうひとつはピエゾ式で電圧を加えることでインクを物理的に変形させ、インクを噴射する方法です。
どちらの方式も、ノズルごとに極めて精密に制御されており、カラー印刷や写真印刷などにも対応できます。
インクは4色(CMYK)を基本に6色や8色などを使う機種もあり、色の重ね合わせによってさまざまな色を表現可能。用紙の種類や表面の質感によってもインクの浸透具合が異なるため、最適な用紙を使用することでより美しい仕上がりが得られます。
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レーザー方式の複合機の特徴は?
レーザー方式の複合機の特徴を下表にまとめました。
特徴1 | 滲みにくい |
特徴2 | 印刷にブレが無く綺麗 |
特徴3 | 印刷速度が速い |
特徴4 | 印刷コストが安い |
特徴5 | 本体料金が高い |
印刷の仕組みの次にそれぞれの特徴を見ていきましょう。
『特徴1|滲みにくい』
レーザー方式は熱と圧迫によってトナー(粉)を定着されているので、滲むということが起きません。
その為、水に濡らしたとしても文字が消えたりする事はありませんし、印刷した際に用紙がシワシワになることもありません。
ただ、熱で少しコピー用紙がカーブしていることがあります。
『特徴2|印刷にブレが無く綺麗』
レーザー方式の場合、コピー用紙によって印刷の質が悪くなったりよくなったりしないので、でき栄えにブレがありません。
企業がレーザー方式の複合機を導入したがるのは安定した印刷が可能だからです。
『特徴3|印刷速度が速い』
レーザー方式の場合、スタンプのように1ページ単位で印刷を繰り返します。
そのため印刷速度が速く、会議資料で大量に印刷する場合などに時間短縮が可能です。
『特徴4|印刷コストが安い』
導入する複合機の種類や契約内容にもよりますが、一般的にレーザー方式の方が1枚にかかる印刷費用は安くなります。
部品代としてトナーは高額となりますがその分印刷可能枚数が多く、コストを抑えることが可能です。
業務用の場合は、トナー料金は無料の変わりにカウンター料金というものがあり、その場合ではモノクロで1枚あたり2~3円、カラーで15~25円という金額は発生します。
『特徴5|本体料金が高い』
レーザー方式の仕組み上、印刷物が出来る過程までの工程が長く、構造も複雑になっています。
トナー自体はインクジェットよりも割安の変わりに、本体価格はインクジェットの3倍ぐらいは軽く違ってきます。
インクジェット方式の複合機の特徴は?
インクジェット方式の複合機の特徴を下表でまとめました。
特徴1 | 滲みやすい |
特徴2 | 条件を満たせば写真並みの印刷が可能 |
特徴3 | 消費電力が少ない |
特徴4 | 印刷コストが高い |
特徴5 | 本体価格が安い |
次にインクジェット方式の特徴について見ていきましょう。
『特徴1|滲みやすい』
インクジェットはインク(水性)を使うため、水を濡らしたら滲みます。
特に安いインクジェット複合機は印刷品質が悪いので、水滴レベルでも滲んでしまいます。
ベタ率が高く、安いコピー用紙だとインクでシワシワになることもあります。
『特徴2|条件を満たせば写真並みの印刷が可能』
基本的にインクジェットは品質が悪いですが、業務用のインクジェットプリンターで専用の用紙を使えば、写真並みの綺麗な印刷が可能です。
レーザーだと常に80点ですが、インクジェットだと50点~95点というムラがあるイメージです。
中には、6色や8色といったインクを使用する機種もあり、デザイン関係の会社で良く使用されています。
ポスターや写真の印刷に適していますね。
『特徴3|消費電力が少ない』
使用頻度や複合機かプリンターかなどによって変わりますが、一般的に消費電力が安いのはインクジェット方式になります。
【インクジェット複合機】
最大電力:80~100W
稼働時:60~70W
待機時:9~10W
【レーザー複合機】
最大電力:1,100~1,300W
稼働時:500~600W
待機時:100~150W
『特徴4|印刷コストが高い』
家庭用から業務用までありますが、基本的にインクジェット方式のインクは高いです。
これはビジネスモデルとして「インクで利益を出す」というメーカーの思惑があります。
製造コストだけで言ったらトナーの半分以下のコストで生産が可能と聞いたことがあります。
『特徴5|本体価格が安い』
インクジェット方式は構造が簡単なので、比較的安く製造ができます。
家庭用で安いものだと1万円ぐらい機種もあったりします。
ただ、それでも本体のみの利益率でいったら僅かでしょう。
先ほどお伝えしたとおり、インクカートリッジで儲けている為、ここまで本体の価格を抑えることができるのです。
複合機のレーザー方式とインクジェット方式の見分け方は?
インクジェット複合機とレーザー複合機は、下記の見方で見分け方ましょう。
- 体や取扱説明書にある注意書き
- 商品名やスペック情報
- カートリッジの種類
まず、インクジェット複合機かレーザー複合機かを判断する方法について理解しましょう。
本体や取扱説明書に「レーザー専用紙の使用禁止」または「インクジェット専用紙の使用禁止」といった注意書きがあるかどうかを確認する方法です。
印刷方式により用紙との相性が異なるため、誤った用紙を使用すると印刷品質が低下したり不具合の原因になったりするため、メーカー側で明確に使用可能な用紙を指定しています。
次に、商品名やスペック情報に「インクジェットプリンター」もしくは「レーザープリンター」と明記されているかどうかをチェックする方法です。
オンラインショップやメーカーサイト、外箱の記載などに記されていることが多く、型番に「LJ(LaserJet)」や「IJ(InkJet)」などの略称が含まれていることもあるため、これらの記号からも判別可能です。
他、実際に装着されているカートリッジの種類を確認する方法。インクジェット方式の場合、水性インクが入った小型のインクカートリッジを使用しますが、レーザー方式では粉末状のトナーが入った比較的大きなトナーカートリッジを使用します。
この2種類はサイズ・形状・質感がまったく異なり、トナーにはドラムユニットと一体型になっているものも多く、見た目で判別が容易です。
この3つのなかで、カートリッジの確認は誰にでも簡単にできて確実な方法です。
インクカートリッジは軽量でコンパクト、液体インクが内部に入っており、手に持つとある程度の柔らかさや透明の窓があることが多いです。
一方、トナーカートリッジは大きくて重く内部に粉末トナーが詰められているため、振るとカサカサと音がすることもあります。
こうした違いを把握しておけば、複合機の種類を間違えることなく、適切な消耗品の購入や保守管理が可能になります。
複合機はレーザー方式とインクジェット方式はどっちがよいの?おすすめの職場環境を考察!
複合機を選ぶときは、職場の印刷環境や使い方に合わせて、レーザー方式かインクジェット方式かのどっちかを選ぶのがポイントです。
印刷枚数が多くてスピードやコスト重視の職場には、印刷が速くてランニングコストも安いレーザー方式が向いています。
一方、写真やカラー印刷が多く、印刷枚数がそれほど多くない職場なら、きれいな色表現ができて導入コストも抑えられるインクジェット方式がおすすめです。
つまり、印刷の量と目的に合わせて選ぶのが、職場に合った複合機を選ぶコツだということです。
『複合機がレーザー方式向きの職場』
レーザー方式の複合機・プリンターが向いている職場について見ていきましょう。
印刷量が多い
上記で説明したように、レーザー方式は印刷速度が速く、1枚当たりの印刷コストも安く抑えられます。
プレゼン資料などで一回に100枚以上など、大量に印刷する場合に適しています。
会議資料など鮮明な印刷を必要としない
印刷内容として、文章や簡単な表やグラフ程度の印刷であればレーザー方式でも全く問題ありません。
というよりもインクジェット方式で最高のパフォーマンスが得られるのは、専用の用紙と業務用の機械で、通常の事務作業で印刷される様な場面では、レーザー方式の方が綺麗に印刷ができます。
解像度によって変わりますが、よほど古くない限り解像度は600×600dpiほどあれば写真などでもかなりきれいに印刷が可能です。
『複合機がインクジェット方式向きの職場』
次にインクジェット方式が向いている職場について見ていきましょう。
写真など鮮明さが必要な印刷が多い
インクジェット方式は多くの色を使用して印刷するため、より鮮明に印刷することが可能です。
写真やパンフレットなど鮮明さが重要なデザイン関係の職場に向いています。
印刷速度が遅いので、量が多い場合はレーザー方式の方がよい場合もあります。
使用量が少なく、導入コストを抑えたい
プリンターと業務用の一般的な大きい複合機の大きな違いの一つに価格があります。
最新の複合機の場合は購入する場合は100万円以上してしまいますし、リースの場合は最終的に返却しなければなりません。
プリンターであれば比較的安く購入することが可能で、複合機のように様々な機能がついたプリンター複合機でも20~30万円ほどで購入できるものが多くあります。
さいごに|複合機のレーザーとインクジェットの違いを理解して職場の需要にあったものを導入しよう!
今回は、レーザーとインクジェット方式の違いについて解説してきました。
どちらが良いというわけではなく、それぞれに特徴があり向いている作業とそうでない作業があります。
職場ではどれくらいの量を印刷していてどのような印刷物が多いのかなど、把握したうえで導入すると大きく作業効率をアップさせることが可能となります。
作業に合ったものを選べばランニングコストの削減にもつなげることができます
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